今が旬のウニの味

どうやら人間の味覚はそうとう曖昧な感覚らしい。
そんな書き出しをするのが豆クマでないことを長年愛読している皆さんなら、察するのは容易のはず
始めましての人は始めまして、今年の6月より熊石地区の地域おこし協力隊に配属された熊五郎だ
皆さんどうもどうも、ご無沙汰でしたね。
さて、適当な挨拶はこれくらいにして、味覚の話に戻ろう
少し想像してみてほしい。
友人と河原でバーベキューをしたときに食べた100g98円の豚バラ肉と、別れ話をする際に予約したこ洒落た料理屋で出された1980円のコンフィでは、圧倒的に前者の方が美味しいという記憶だろう。
むしろ後者に関しては味などしなかっただろう、否、僕は味など全くしなかった。
手持無沙汰でテーブルにおいてある胡椒をガリガリと大量にかけていたのだが、味はわからない、どう頑張っても胸を突き刺す辛い記憶しか思い出せなかった。
このように、味覚は気分によって左右される。
(変な事を思い出したおかげで今は最高の気分だ!)
実際にスイスのミシュラン2つ星レストランでは席に仕掛けを施し客が楽しくなったタイミングでコースの1品目を出すなんてこともしている。
また、料理を出される前の気分、いわゆる期待も味に影響する。
なにも言われずに出されるより、有機栽培や放牧され、大切に育てられたものだと言われると人は美味しく感じる。
スペインにあるムガリッツ(世界的に有名なレストラン)では、客の期待を最高潮にするためにレストランにいたるまでの道のり、車からの眺めにも気を配っている。
プロ根性とはこの事、といった感じである。
いやいやいや、そんな事は当たり前だろ、と思えるかもしれないが、視覚の場合、楽しい時もつらい時も赤色は赤色で、急に緑色に見えたりなどはしないはずだ。
色の話が出たが、その色も味覚を左右する一つだ。
青色は食欲減退効果があるなんて話は有名だが、ある長期医療移設で行われた実験では、コントラストの強い皿とグラスで料理を提供したところ、食事量が25%、飲み物摂取量が84%も増加した、なんて結果も出ている。
色鮮やかな盛り付けをされると美味しく感じる事はさることながら、料理と皿のコントラストが強いと美味しく感じるようだ。
身近で食事量が減り心配な方がいれば、実際に試してみてもいいかもしれない。
ただ、結果が思ったようにいかなくても僕に対しての批判はご遠慮したい
この一連の話は”おいしさの錯覚”(チャールズ・スペンス著)を参考にしているので、その本のAmazonレビュー欄などにお願いしたい。
ただ、うまくいった場合はレビュー欄はさることながら、できれば直接伝えてほしい、嬉しくなる。
あと、「文章面白かったよ!」「もっと書いて!」「もう1万円あげちゃう!」
なんかも言われると、とても嬉しくなる、想像しただけでも小躍りしてしまいそうだ!
さてさて、味覚の話に戻るのだが
イギリスのチョコレートブランドのキャドバリー社で出ているチョコレートバーのパッケージを角が取れて丸みを帯びた形にして結果、消費者から「甘くなった」、「クリーミーさが増した、前のレシピに戻してほしい」などの抗議が起こった。
もちろん、キャドバリー社はレシピの変更は全くしていない、パッケージの角を取っただけだった。
なんて話もある。
人は丸い物は甘く感じやすい
他にも、丸みを帯びたグニャグニャした図形と尖りのあるトゲトゲした図形を見せ、それぞれで連想される味を聞いたとき、甘い、クリーミー、チョコレートなどの味は丸い図形、酸っぱい、苦い、炭酸などは尖った図形で連想された。という実験もあったりする。
僕も熊石へ来て早一か月が経った。
先日、とある飲食店へ連れていってもらった(※公の文書のため店を特定する内容は避けています。)
そこでは既に常連の方がおり、一緒になる形になった
酒を交わしつつ、会話もはずみ、熊石で食べることのできるウニの話になった。
僕はまだ熊石のウニを食べたことがない
その旨を話すと、常連の1人が今あるかどうか聞いてくれたのだが、残念ながらウニは切らしていた。
「明日の朝に仕入れるから、明日以降またおいで」と女将さんが言ってくれ、明日仕事が終わったらすぐに向かうことを約束し、店を後にした。
次の日、仕事が終わってからすぐに向かい、カウンター席に着くとショーケースに入っている黄金に輝くウニを入れた木箱が目についた。
ちゃんと今日のために仕入れてくれていた
注文を終えると、女将さんがウニをスッスとテンポよく僕が食べるであろう丼ぶりに並べる
いざ着丼すると、そこには、今朝仕入れられた新鮮そのもののウニが丸いどんぶりに盛られていた。
また、黒と金の強いコントラストはよりいっそうウニを輝かせた。
1日我慢し、今朝に仕入れられたという”期待”と”丸い”器、黒と金の”強いコントラスト”
食べ物を美味しく感じる条件は十二分に揃っていた。
ポケモンでいう、攻撃力が6段階あがったうえ、てだすけの効果を受け、ピントレンズを持ちはりきり状態みたいな感じだ。
しかも出される技は、たいあたりなんかではない。ギガインパクトである。
世代間を考慮すると、ダイの大冒険の若返った大魔王バーンが光魔の杖でカラミティウォールを放ってくる。
全盛期の室伏広治が存分にドーピングをし、ちょっと軽い鉄球を投げる。そんな感じだ。
僕は大胆にも頬がいっぱいになる量の室伏広治を取り、口へ運んだ
美味い!!いや、甘い!!!
寺門ジモンが「美味いは甘い」、と言っているが、実感した!
それと同時に絹のような滑らかさが口に伝わる
遅れて、海洋の生命力を圧縮したかのような力強い香りが口に広がり、甘さを追い越し、鼻腔まで駆け抜けて行った。
最高の味だ
いままでで、ウニを食べたことがない訳ではない。
ただ、荒々しい磯の香りとねっとりへばりつくような食感、えぐみの強い味があり、好きではなかった。
今回の経験でその固定観念は一掃された。
漫画トリコではベジタブルスカイという場所で、トリコたちが野菜を食べたとき、俺がいままで食べていた野菜は腐っていたんじゃないか⁉と感動するシーンがあるのだが、僕が今まで食べていたウニはどうやら腐っていたようだ。
『少しずつゆっくり味わって食べよう』
そんな理性はとっくに崩壊している。
気付いた時には漆塗りされた丼の底しかなかった。
無くなってしまった哀しさはあるものの、不思議と幸福感は持続している。
鼻腔内に留まる、やわらかくも力強い、さながら室伏広治のような海洋の香りのおかげであろう。
室伏広治による幸福感は寝るまで続いた。
室伏広治ありがとう。
そんな最高のウニ丼を提供してくれるのが、熊石ーー町にあるーーーーだ
(※公の文書のため店を特定する内容は避けています。)
皆も熊石へ来たら行ってほしい。
安心してくれ熊石には飲食店が数える程しかない為、少し梯子をすればすぐに見つかる。
今が旬のウニの味をぜひ皆さんの口でも是非味わってほしい。

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