「やってあげる」こと

私の家には祖母がいます。今年で85歳になります。
私が子どものころには、兄と妹を含めた三人の面倒を見てくれていました。
散歩に連れて行ってくれたり、ご飯を作ってくれたり…
両親が共働きでしたが、学校から帰るといつも祖母がいてくれました。

そんな祖母は、今、病気で目が不自由になり、足腰も弱っています。
「危ないことはさせられない」と、料理などは私や母がするようになりました。
料理は包丁で手を切るかもしれない、お風呂掃除なんて転んだら大変だ……
そうして、次第に祖母の仕事は減り、私たちの仕事が増えていきました。
しかし、それらはすべて、私たちが勝手に決めたことでした。

ある日、いつもどおりに食器を洗おうとしたら、祖母が少し怒ってこう言うのです。
「これくらい自分でできるから、やらなくたっていいよ!」

そのとき、はっとしました。

もしかしたら、私が祖母からできることを奪っているのではないか。
そうして祖母のプライドを傷つけているのではないか。

私たちは、少しでも祖母が楽になるようにと「やってあげて」いるつもりでした。
しかし、それは、今までできたことができなくなったという残酷な事実を
祖母に突きつけていることに他ならないのです。
「これは祖母一人でもできる、これは手伝おう」と考えることもせず……

それからは考えをあらためて、できることはやってもらうようにしました。
危ないからと、なんでも「やってあげる」ことがいいわけではなく
できることはやってもらうのも必要なのだということを学びました。

 誰かのための行動は、「やってあげる」ことだけじゃないんですね。    S・M


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