ルコツ岳のカムイエカシ

ルコツ岳のカムイエカシ

八雲地域のおはなし

MAP No.23【ルコツ岳のカムイエカシ】

ルコツ岳という山があります。昔、サル(沙流)からきたアイヌがこの近くのポンシララというところに住んでいました。この一族の一番上の兄にあたる老人が、ある日、他のコタンのお祝いに招かれて行ったまま、帰って来ないので、心配した人々が山を探しに行くと老人の足跡を見つけました。それを辿り山に行くと、老人の足跡が熊の足跡に変わり、ルコツの山に登っているのを見ました。ある晩に老人が夢に現れて、「ルコツの山の主が年寄りになって、天に昇ってしまったので、自分がその代わりにルコツ山の主になることになったのだ。」ということを知らせました。

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ルコツ岳のカムイエカシ

八雲と長万部の町界になっているルコツ川の上流に、ルコツ岳(531.9メートル)という山がある。
昔、日高の沙流から来た人たちが、この近くのポンシララというところに住んでいた。
この一族の一番上の兄にあたる老人が、ある日他のコタンのお祝いに招かれて行ったまま、いつまで待っても帰って来ない。そこで先方に問い合わせたところ、老人はすぐに帰ったという返事であった。
人々は心配して山の中を探しているうちに、老人の足跡を発見したのでそれをたどって行くと、足跡はルコツ川に沿って山の方へ行っている。
しばらくそれを追って行くと、途中の木の枝に老人の持っていた弓が掛かっていた。
その弓を持ってなおも跡を探して行くと、今度は老人がいつも持っていた袋が木に掛かっている。
それでいよいよ間違いないということで山に登って行くと、老人の右の足跡がいつの間にかくまの足跡に変わっており、さらに少し行くと左の足跡も変わってしまい、その跡はルコツの山に登って行っているので、「老人はくま(カムイ)になったのだから、後をつけることはよそう。」と言って一同はコタンヘ帰って来た。するとある晩、夢の中にその老人が現れて、 「ルコツの山の主が年寄りになって、天に昇ってしまったので、自分がその代わりにルコツ山の主になることになったのだ。」ということを知らせた。
それからこの山に登った老人のことを「ウレポロクル・カムイエカシ」(蹠(あしあと)の大きい神なる翁(おきな))といって尊敬し、くまの捕れない時には、このくま老人(カムイエカシ)に酒を上げて、祈りを捧げたものであるという。(岩田弘司輯「八雲の地名と伝説」)